本日は、皆さんにはあまり馴染みのないものかもしれませんが、
日本でも「ジャパントラック2012」という補聴器に関する調査が、日本補聴器工業会(JHIMA)より15,000人を対象に行われていますので、ご紹介します。
それによると、日本の補聴器市場では、欧米とは異なる実態があります。
日本で難聴の方が、どこで補聴器を購入しているか調査を行ったところ以下のようになっています。
〇補聴器専門店:56%
〇メガネ店:18%
〇インターネット:7%
〇通信販売:7%
〇電気店:4%
〇その他(時計店・宝石店・デパートなど):5%
〇病院:2%
日本の難聴者の比率は、人口の10.9%、このうち14%しか補聴器を所有していません。
更に、補聴器に満足しているのは36%、逆に補聴器を持っていても全く使っていない人は12%になるそうです。
欧米での調査でも、難聴者の比率はあまり変わりませんが、このうち補聴器を所有している人は30~40%。
驚くことに補聴器の満足度は、70~80%
つまり補聴器を買った人の大半は、「買って良かった!」と思っています。
先進諸国に比べ、日本で補聴器の普及率や満足度が向上しない原因としては、有資格者(認定補聴器技能者)から補聴器のフィッティングを受けておらず、買ったっきり調整が行われていない人が多いことが考えられます。補聴器の基本は、『買ってからが使いこなすためのスタート』ということです。
現在、認定補聴器技能者の数は日本全国で、2,975人(2015年9月23日現在。人口比率では約40,000人強に一人)
近年、デジタル補聴器が9割以上を占めており、難聴者の気導値さえわかれば、ソフトで簡単にフィッティングができます。メーカー各社のソフトやフィッティング計算式の精度が向上したおかげで、初期設定でもある程度は、「聞こえる」ようにすることは可能です。
しかし、難聴者の聞こえは様々で、ひとりひとり好みの音もあるうえ、使う状況も人によって異なります。
そのため、フィッティングソフトの『初期設定』で満足度が上がるとは限りません。
私もメーカー時代、メガネチェーン店さんを中心に、補聴器勉強会を行っていました。
しかし、限られた時間で行われる勉強会の目的は、調整ソフトもそうですが、補聴器を販売するための販売者の短期育成が主となります。
『基本調整』は、ある程度習得していただきますが、難聴者の複雑な要望に対する細かな調整については省かれています。
『細かな調整』を行っていくには、難聴の基礎知識やフィッティングルールの知識がないといけませんし、上にも述べましたが、難聴者の生活環境や使用状況を把握したうえで調整を行わないといけません。
ですから、補聴器担当者の中には難聴の原因である伝音難聴と感音難聴の違いや、その他に考えられる症状について知らない方もおられます。また、補聴器利用者の言われるがままに調整を行い、間違った調整で補聴器を使っている場合もあります。こうなると、補聴器に対する満足度が低下し使用しなくなるケースが増えてしまいます。(専門分野ではないので、当然といえば当然なのですが^^;)
では、なぜ、メガネチェーン店さんで補聴器を取り扱っているのか?
その理由は・・・
高齢者人口(補聴器を必要とする年齢層)は右肩上がりなのに対し、補聴器専門店は、ある程度人口が密集した中心部に多く、地方の方には不便だからです。
補聴器メーカーさんも地方についてはメガネチェーン店さんの販売網に頼らざるを得ません。
都市部以外にこそ高齢者が多く、高齢者の絶対数が多ければ必然的に難聴者の数も多くなるのに補聴器専門店が無いのは若干、矛盾していますよね。
補聴器専門店は、あまり広告や宣伝を行いませんが、メガネ店さんは定期的に販促活動を行われています。そこで、メガネ店さんが補聴器を取り扱っていると思っている方も多いはずです。
補聴器専門店も補聴器対象者の方々が、これまで以上に補聴器を身近に感じていただけるよう、補聴器の啓蒙・販促活動が必要ですね。
大手のメガネチェーン店さんでは少しずつですが、「認定補聴器技能者」資格を取得させるようになってきています。ただし、各店舗に必ず1名以上「認定補聴器技能者」がいるというところまではできていません。
『補聴器専門店』と『メガネチェーン店』がそれぞれの課題をクリアできれば、日本も欧米並みに補聴器の普及と満足度が向上するはずです。
「補聴器を買ってよかった


